対象者の探求を阻害する自分の不安

先月に依頼を受けて実現した、乳児を連れたご夫婦のご来店。

 

 

相談時の狙い通り、

自宅で昼食を済ませた後の移動中、まんまとお昼寝に突入した子供と共に、ご夫婦は静かにドアを開いて来店。

 

そーっと起こさないように店のソファに寝かせつけ、さて、これで二人ともゆっくり過ごせますね、と。

 

奥さんの施術中は、

旦那さんも待合で一緒に夢の世界へ。

 

音楽も電話の呼び出し音も消し、静まり返った店内に寝息が2つ…

 

 

 

 

 

そんな中での、奥さんの腰痛の施術。

 

簡単な問診を終えた後は、この状況に楽しくなって必要以上に無言。

これが、言葉を使ったコミュニケーションの制約。

 

 

 

 

 

所見は、

上手く荷重が出来ない左股関節。それを代償する右股関節外転筋群の硬さ。

 

吸気方向に硬くなった胸郭からは、時間に終われる日々の中での習慣的に浅くなった息遣いを感じる。

 

 

その2つに挟まれた右腰部の深層筋が、上体を起こすという仕事に悲鳴をあげているような腰痛だった。

 

 

 

 

 

座って上体を起こす。

ちょうど子供を抱っこするような動きを1つ目のリファレンスに。

 

仰向けで地面に足を押し込む、ブリッジのような動きを2つ目のリファレンスの動きに。

 

その中で、

再現痛を確認しつつ、そこに参加する身体の各部位の役割を、無言で共有したつもり。

この時点では、この動き痛いなぁ位だろう。 

 

 

 

 

膝を立てた臥位から、

股関節や下腿の様々な位置関係の中、左足底への荷重のバリエーションを探求していく。

 

 

 

言葉を使う普段よりも、

足底へ荷重を伝える手が、全身のリアクションを確認しながら行うように繊細になった。

 

対象者の頭の上に、時折 疑問符が浮かぶけど、この暗黙の"喋っちゃダメよルール"の下に一旦飲み込まれる。

 

 

 

 

足底へ荷重しようとする際、

過剰に反応する股の屈筋が収縮するのを辞め、より楽な荷重感覚を見つけた頃、2つ目のリファレンスに戻ると、対象者はなんだか納得した表情をした。

 

その後、右股関節、上部体幹へと進むが、

疑問符が出ては、リファレンスの動きに戻るたびに何かを実感していくようだった。

 

 

 

 

 

結論として、

運動スキルを伝えるのに、言葉ってどんだけ必要なんだ?という話。

 

頭の上に浮かんだ疑問符を、言葉を使って解消してしまっていたことが、対象者の探求を妨げていたんじゃないかと。

 

 

 

『 探求は、答えを見つけることじゃない。』

頭では分かっていながらも、そこに言葉を投げたくなっていた事は、自分自身の不安。

 

 

終わって立ち上がった頃、

子供はもう起きているにも関わらず、言葉はいらずに2人で頷いた。

 

大切な気づきを、この制約からもらいました。

感謝!